歯並びは見た目を大きく左右することから、大人になってから気にし始めるという方も少なくありません。歯並びを良くするためには矯正歯科に通う人が多くいますが、その前段階で生まれる悩みが「歯医者の選び方」ではないでしょうか。
現在、日本中の歯科医院の中で矯正治療を行っている歯科医院は2万件以上あるといわれています。実際、東京都内には矯正を行っている歯科医院はたくさんありますし、渋谷駅の周辺に絞っても、矯正治療ができる歯医者が多数存在します。また、時間と費用がかかるうえ、何度もやり直しができるものではないため、失敗を避けたいと考える方も多いでしょう。
この記事では矯正歯科の選び方、チェックするべきポイントや治療の流れについて紹介します。
「歯医者が多すぎて選ぶのが大変」「矯正に高いお金を払って失敗したくない」「きちんと納得できる治療を安心して受けたい」とお考えの方はぜひご覧ください。
◇矯正歯科とは
歯並びが悪いと上下の歯が上手く噛み合いません。この状態は、専門的に「不正咬合(ふせいこうごう)」と呼ばれます。
上下の歯がうまくかみ合わないと、食べ物をよくかみ砕けなかったり、虫歯や歯周病を招きやすくなったりとさまざまな問題が生じます。見た目だけではなく健康上の理由からも、できるだけ早いうちに整えておいた方がよいでしょう。
◇一般歯科でなく矯正歯科を選ぶほうが良い
いざ歯並びを直そうと思い立っても、数が多いためにどの歯医者に通うべきか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。なかには選ぶのが面倒だからかかりつけの歯医者に行こうと考える方もいるかもしれません。
歯医者には一般歯科と矯正歯科があり、それぞれ得意とする分野が分かれています。歯並びの矯正治療は一般的な虫歯の治療とは異なるため、矯正を行うのであれば矯正専門の歯科を選ぶことをおすすめします。矯正歯科には学会の認定資格があり、その資格を持った医師がいたり、矯正歯科を専門に扱っていたりする歯科がおすすめです。矯正には通常2~3年程度の時間が必要となり、高額な費用もかかります。専門の矯正歯科を選び、納得した期間や費用、治療内容を安心して受けられることが大切です。
◇矯正歯科の選び方
最寄り駅や家の徒歩圏内に数多くの矯正歯科医院がある場合、どの歯科医院に行けばいいのか迷ってしまう方も多いでしょう。具体的な矯正歯科の選び方を紹介します。
|料金や費用をはっきり提示してくれる
多くの方は、矯正治療がどれくらい治療費や治療期間がかかるのかが気になると思います。できるだけ治療の費用が安く済んで、早く終わるに越したことはないですよね。
矯正治療は矯正料金の他に、調整料金や保定装置代がかかる歯科医院も少なくありません。治療期間や内容によっても費用は異なり、場合によっては想定していたより多い費用が発生することもあります。いざ治療を開始し、当初の説明に無かった追加料金を請求されても治療途中でキャンセルするわけにはいきません。
そのため、最初の相談で、治療が始まって終わるまでの流れや、トータルでどれくらいの金額がかかるかをはっきりと説明してくれる歯科医院が望ましいです。さらに、追加料金が発生する可能性や、トータルでどれくらいの費用が見込まれるのかを明確に提示してくれる歯科医院がおすすめです。
矯正治療では無料相談を行っている歯科医院も多いので、初回の相談時にしっかりと確認しておきましょう。聞きにくいことでも、この時にわからないことはしっかりと聞いておくのがポイントです。
また、たまに矯正のモニター患者を募集している医院などがあります、自分の症例を医院のHPなどにアップさせてもらうかわりに、治療費を安く提供してもらえたりすることがあるので、自分の症例をネットなどに出すことが許容できる人はそういったキャンペーンを利用するのも良いかもしれません。
|自分が通いやすい
歯科医院のロケーションも重要な要素の1つです。
矯正治療は長くかかる治療です。場合によっては2~3年の間、定期的に通院しないといけないこともあります。治療期間中に突発的な痛みや急なトラブルがあったときにすぐに相談できるよう、アクセスしやすい場所にあると安心です。できるだけ自宅や職場の近くの矯正歯科にまずは相談するのが良いでしょう。
歯科の場所以外にも予約の取りやすさや診療時間など、自分のライフスタイルのなかで通いやすいかを判断するのがおすすめです。
立地や通院の利便性も大切ですが、同時に相談しやすい先生やスタッフがいる歯科医院を選ぶのも重要です。あたりまえのことなのですが、矯正歯科治療は人が行うものです。治療を行う先生やスタッフとの相性が悪ければ、円滑なコミュニケーションやしっかりと細かいところまで行き届いた治療を行うことができずに、良い治療結果を得ることができない可能性が高くなります。
最初の相談の際に、その医院の院長や先生、スタッフが話しやすい雰囲気を作ってくれているか
どうか、また忙しいからといって対応が雑になっていないかどうかを確かめましょう。
|治療のメリット・デメリットの両方を説明してくれる
矯正歯科の治療には複数の方法があります。歯の状況によってはいくつかの選択肢を提案される場合もあるでしょう。その際に、それぞれの治療法のメリット・デメリットの両方についてしっかり説明してくれる矯正歯科医院を選ぶようにしましょう。
治療法によって治療期間や費用が異なるだけではなく、痛みを伴ったり、抜歯が必要になったりすることもあります。「短期間で治療を終わらせたい」「矯正が目立たないようにしたい」など優先順位を明確にし、それに適した治療法のメリットとデメリットを把握したうえで治療を受けるようにしましょう。
|治療の内容や期間をしっかりと説明してくれる
治療方法や具体的な金額・期間、どのような流れで治療を進めていくのかしっかりとした計画を立ててくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。
仮に最初にトータルコストや全体的な治療計画が提示されない場合は治療をその場で申し込まずに持ち帰り、
セカンドオピニオンを取り入れるか他の歯科医院を選択するのが良いでしょう。
インビザラインといわれるマウスピース矯正では、初めにクリンチェックといわれる矯正治療の3Dシミュレーション動画を作製します。これは矯正治療開始前にどのような歯の移動をして歯並びが治っていくかを患者も確認できます。この動画の説明をしっかりと時間をとって行ってくれる歯科医院は、治療に対してとても真摯に対応してくれる歯科医院であると思います。逆にそういったものがあることすら伝えてくれない歯科医院は要注意です。
現代の治療は患者ファーストの治療なので、医師が独断で勝手に治療を勧めることは許されません。患者が全く理解していないのに治療を進めたりしない医院をしっかりと見極めましょう。
|矯正方法について複数の取り扱いがある
矯正方法の取り扱いが複数ある矯正歯科がおすすめです。不正咬合の原因は骨格や歯の傾き・大きさなどが要因です。骨格や歯の形状は人それぞれであり、全く同じ形状のものは1つもありません。したがって、1つの矯正方法だけで千差万別の不正咬合に対応するのは困難です。
矯正治療は歯を移動させて治療を行います。歯の状況に応じて適した治療方法を使い分ける必要があるため、どんな症例に対しても適切な提案をしてもらえることが大切です。歯全体を矯正するべきかどうか、部分的な矯正が効果的か、抜歯は必要かどうか…といった患者の歯の状態や骨格、ライフスタイルに合わせて、必要な治療を的確に選択・提案してくれる矯正歯科が良い歯科と呼べるでしょう。
|症例の多さ
過去の症例が多いということは、さまざまな歯の状況に対応してきたということです。つまり豊富な知見とノウハウ、実績があることから信頼もしやすくなります。
仮にイレギュラーなことがあっても、過去の経験から分析し適切な処置をしてくれる可能性が高いため、ウェブサイトで歯科医院の治療実績などを事前に確認すると良いでしょう。
◇矯正歯科の治療方法とは
歯並びの矯正方法はいくつかあり、歯の状態によって使い分けられます。
ここでは「マウスピース矯正(インビザライン)」「部分矯正」について解説します。
|マウスピース矯正(インビザライン)
現状の歯並びに合わせてマウスピースを作り、それを装着することで矯正する方法です。マウスピースは透明なのでワイヤーを使った従来の矯正方法(ブラケット矯正)よりも目立たないのが特徴です。違和感も最小限で済み、自分で取り外しができるメリットがあります。
近年では、仕事の関係などで矯正装置が付けられずこれまで矯正治療ができなかった芸能人や営業職の方々も、インビザラインをはじめとしたマウスピース矯正によって目立たずに治療を受けられるようになったため、大人になってから矯正治療を受けるケースが増加しています。
マウスピース矯正のなかでも、システムの違いにより様々な方式の種類があります。医院によって
選択しているシステムなどが微妙に違うので、歯科医院で相談する際に確認することをおすすめします。
|部分矯正
前歯や奥歯の数本だけ矯正したいときは部分矯正で対応可能です。
歯の隙間を削合したり、歯の隙間にスペースを設けて出ている歯を入れ込んだりして歯並びを整えます。費用や治療期間は治療内容によって異なりますが、全ての歯を矯正するよりも期間が短く、費用も安い傾向です。
◇矯正歯科の治療の流れ
最後に、歯並びを矯正する流れについて解説します。
|初診相談
初診相談は治療前の打合せと考えて良いでしょう。気になる部分がどこでどのようにしたいのか、
どの治療方法が適しているかなどを確認します。
前述のようにおおよその期間や費用についてできるだけ細かく確認するようにしましょう。
|精密検査・診断
レントゲン撮影や歯の型取り、顔の写真撮影などを行います。精密検査結果を持ってどのような治療が必要なのか、費用はどれくらいかかるのかなど医師が明確化します。不明点などある場合は治療に入る前にすべて確認するようにしましょう。
|準備
精密検査・診断を行い矯正方法が決定したら、それに対する準備を始めます。矯正装置をつくるために再度歯の型取りをした後、矯正装置やマウスピースの作製に取り掛かります。
歯の型取りから矯正装置が用意できるまでの期間は1~2カ月程度です。
|矯正治療開始
矯正装置が届いたらいよいよ治療開始です。最初の診断から実際の治療に入るまで2〜3カ月はかかることになります。装着後は1月に1、2回のペースで通院し、2~3年程継続します。
|保定期間
歯並びが整ったら矯正器具を外し、保定期間に入ります。治療後の歯は元の位置に戻ろうとするため、それを防ぐためにリテーナーという保定装置を装着します。保定期間は2年ほど続き、この間も定期的な通院が必要です。
◇納得できる矯正歯科を選び、安心して通院することが大切
歯列矯正は100年以上前から行われている歴史のある治療ですが、装置の種類はずっと金属製のワイヤーが歯の表側に付く方法が主流でした。しかし、最近は歯列矯正のシステムが驚くほど進化し、審美的に優れた目立たない矯正治療の方法がでてきて、色々な矯正方法が選べるようになってきました。そのぶん、矯正治療を行っている歯科医院の数も多く、いざ矯正をしようと考えても悩んでしまう方が増えたのも事実です。
歯並びの矯正は一生に一度あるかないかの機会となるため、失敗しない歯科選びが重要です。自分が納得できるよう、正確な情報を集めて質の良い矯正治療を受けることを目指しましょう。