皆さん、こんにちは。渋谷宮下パーク歯科・矯正歯科です。今日は、インビザライン矯正に関心を持ちながらも、「あなたの歯並びはマウスピースでは矯正治療ができない」といわれた方々に向けて、インビザラインが向かない症例とその他の矯正治療選択肢についてお話ししたいと思います。
▼インビザラインできない症例
次に挙げる5つの症例に関しては、インビザラインできないことがあります。
1. 重度の咬合異常
インビザラインは、軽度から中等度の咬合異常を修正するために効果的ですが、重度の咬合異常の場合、インビザラインだけでは十分な治療効果が得られないことがあります。例えば、極端な受け口や開咬(上下の歯が噛み合わない状態)、前歯の噛み合わせが深い過蓋咬合などが該当します。
2. 回転した歯や大きく移動が必要な歯
歯が大きく横に回転している場合や、特定の歯を大きく移動させる必要がある場合、インビザラインでは力を十分に加えることが難しいです。これらの状況では、従来のワイヤー矯正の方が適している場合があります。
3. 垂直方向の移動が必要な場合
歯を垂直方向に移動させる必要がある場合、インビザラインでは対応が難しいことがあります。これは、インビザラインが提供する力が主に水平方向や回転方向に作用するためです。
4. 顎の骨格に問題がある場合
顎の骨格自体に問題がある場合、例えば顎の大きさが不均等であるなど、インビザラインでは根本的な解決には至りません。このような症例では、外科矯正を含む他の治療方法が必要になることがあります。
5. 小児の患者さん
インビザラインは取り外しが可能なため、治療の成功は患者さんの協力に大きく依存します。そのため、小学生以下の小さなお子さんの場合、装置を適切に使用し続けることが難しいと判断される場合があります。
◎インビザライン・ファーストという選択肢
近年開発されたインビザラインには、特に子供向けに設計された「インビザライン・ファースト」という治療法があります。この治療法は、お子さんの歯並びの改善だけでなく、顎の骨の発育を正常化することを目的としています。お子さんの口内環境は、成長と共に変化します。インビザライン・ファーストは、この成長期における変化を見越した治療法で、お子さんの将来の歯並びと噛み合わせの健康を大きく向上させる可能性を秘めています。
インビザライン・ファーストの最大の特徴は、成長している顎を考慮に入れた治療計画にあると言えます。子供の顎はまだ発育途中であり、この時期に行う治療が将来の歯並びに大きな影響を与えます。インビザライン・ファーストを用いることで、顎の骨の成長を促し、歯並びの問題を早期に改善することができるのです。
また、インビザライン・ファーストは取り外し可能な透明なアライナーを使用します。このため、お子さんがブラッシングやフロスを行う際の障害にならず、口内衛生を保ちやすく虫歯の原因を作りにくいという利点があります。さらに、透明なアライナーは目立ちにくいため、治療を受けていることによるお子さんの心理的な負担を減らすことができます。
治療の適切な時期は、お子さんの口内環境や成長の段階によって異なります。一般的には、前歯の永久歯が生え始め、顎の発育が活発になる時期が治療を開始する好機とされています。この時期にインビザライン・ファーストを開始することで、歯並びの改善とともに、顎の発育を促すことが期待できます。
インビザライン・ファーストは、お子さんの健康的な歯並びと噛み合わせを実現するための効果的な手段です。お子さんの口内環境と将来の健康を守るために、歯科医師と相談の上、適切な時期に治療を始めることが重要です。
▼その他の治療の選択肢
◎ワイヤー矯正
インビザラインが適さない症例の多くでは、従来のワイヤー矯正が効果的です。ワイヤー矯正は、強力で正確な力を歯に加えることができ、重度の咬合異常や大きな歯の移動が必要な場合に適しています。また、ワイヤー矯正は、お子さんでも扱いやすく、治療の遵守率を高めるための工夫がされています。
◎外科矯正
顎の骨格に問題がある場合、外科矯正が適していることがあります。外科矯正は、顎の骨を手術で調整し、その後に矯正治療を行うことで、顔貌の改善や噛み合わせの大幅な改善を目指します。この治療法は、重度の骨格性咬合異常に対して効果的です。
◎コンビネーション矯正
重度の咬合異常や、複雑な歯の移動が必要な場合、インビザラインだけでは望む結果を得られないことがあります。そういった症例に対しては、インビザラインと従来型のワイヤー矯正を組み合わせたコンビネーション治療が有効な選択肢となり得ます。
このコンビネーション治療の大きな利点は、それぞれの治療法の長所を生かしつつ、短所を補うことができる点にあります。インビザラインは見た目が目立たず、取り外しが可能なため、社会生活における見た目の影響を最小限に抑えることができます。一方で、ワイヤー矯正は強力で精密な力を歯に加えることができるため、重度の歯列矯正や複雑な歯の移動に対して優れた効果を発揮します。
治療の過程では、初期段階でワイヤー矯正を用いて大きな歯の移動や咬合の調整を行い、その後の微調整や保定期間にインビザラインを利用することが一般的です。このように段階的に治療法を変えていくことで、治療の効率性を高めつつ、患者さんの生活の質(QoL)を維持することが可能になります。
コンビネーション治療は、患者さん一人ひとりの症例に応じて柔軟に治療計画を立てることが可能です。そのため、インビザライン単独では対応が難しい複雑な症例でも、より良い治療結果を目指すことができます。患者さんのニーズに合わせた最適な治療法を提案し、美しい笑顔へと導くことが、我々歯科医師の使命です。